クラシコの均衡を打ち破るゴールだった。
カリム・ベンゼマが前を向いてボールを持つと、2列目からフェデリコ・バルベルデが颯爽と走り抜けた。
ペナルティーエリアに侵入して右足を一閃すると、鮮やかにネットが揺れる。4分49秒での得点は、敵地カンプ・ノウにおいては2007年のルート・ファン・ニステルローイ(4分43秒)以来の開始早々のゴールであった。
■ジダンの迷い
2019年夏。ジネディーヌ・ジダン監督は、迷っていた。
その年の春に復帰を決めていた「ジズー」だが、補強の必要性を感じていた。確かにカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの盤石の中盤はジダン監督とマドリーに数々の栄光をもたらした。チャンピオンズリーグ3連覇の偉業は彼らなくしてあり得なかった。
一方でマドリーの主力は高齢化していた。そこでジダン監督が考えていたのはポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)の獲得だ。ジダン監督がフランス人選手を好むのは、最早周知の事実である。ラファエル・ヴァラン、フェラン・メンディといった選手の獲得をクラブに進言したのはジズーなのだ。
だが取引は成立しなかった。ポグバのユナイテッド残留を受け、ジダン監督は違うプランを用意しなければいけなかった。そこで白羽の矢が立てられたのがバルベルデだった。