■良いコンディションで強い対戦相手と試合することの意義
10月の合宿と2試合がオランダのユトレヒトで開催されたことも非常に有意義だった。
まず、「海外組」の選手たちは日本で活動を行うよりも移動の負担がはるかに小さく、良いコンディションで試合ができたはずだ。とくにオランダやベルギー、ドイツでプレーしている選手たちにとっては、普段のリーグ戦における移動とまったく同じような感覚で集合できた。
日本での合宿となると集合当日は長距離移動の直後なのでコンディション調整や時差調整に充てざるを得ないが、ユトレヒトでの合宿なら集合直後から本格的なトレーニングを実施することができる。ただでさえ、活動の時間が限られる代表チームにとっては、この1日の違いは大きい。
さらに、代表での活動が終って所属クラブに戻ってからも、“コンディション不良”のせいでメンバー入りを逃し、それをきっかけに出場機会を減らしてしまうといったリスクを避けることもできる。
日本への往復が原因でクラブでのポジションを失っては元も子もない。森保一監督はそのことを考慮して、親善試合では「海外組」の一部の招集を免除したこともあった。
「海外組」にとって、合宿地がユトレヒトになったことは本当にありがたいことだったろう。
また、カメルーン戦、コートジボワール戦の会場となったユトレヒトのスタディオン・ハルヘンヴァールトはピッチ状態も良好で、その点でもストレスなくプレーできたはずだ。とくに今回の試合は無観客開催だったので、収容力2万3000人程度というハルヘンヴァールトはまさに手頃な規模の会場だった。
10月のヨーロッパの気候もサッカーをするには最適のコンディションだったし、10月の2試合はあらゆる意味で良いコンディションでプレーすることができたのだ。
良好なコンディション、そして適当な対戦相手……。こうした条件があったからこそ、スコアレスドローとなったカメルーン戦からは現在の日本代表の立ち位置がはっきりと分かった。
つまり、守備面ではこの程度の強い相手とも互角(互角以上?)に戦えることが証明されたし、攻撃面ではコンビネーションがうまく構築されないと、こうした強豪からゴールを奪うのは難しいということが分かった。
もし、相手がミャンマーやモンゴルだったら、コンビネーションなどなくても個人能力の差だけで得点は量産できただろうし、また、うまくいかない部分がコンディション不良のせいにされてしまっていたかもしれない。
あらゆる意味で、ユトレヒトという地でカメルーンやコートジボワールと戦えたのは有意義なことだった。