つい忘れそうになるが、それはこの夏の出来事だ。
「それ」とは、リオネル・メッシの退団騒動である。バルセロナのカンテラーノであり、クラブを象徴する存在が、弁護士を通じてクラブにBurofax(ブロファックス/内容郵便証明)を送り移籍希望を表明。その決断と行動はメディアを巻き込み大きな騒ぎを巻き起こした。
最終的には、メッシが翻意して残留を宣言した。正確に言えば、2021年夏まで契約を残す状況で、契約解除金7億ユーロ(約840億円)が支払われない限り移籍を容認しないというクラブの姿勢に、メッシが折れた格好だった。
■バルトメウ会長と理事会の立場
だがメッシ退団騒動の影響は免れなかった。ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長をトップに据える理事会に対する不信任決議を求める動きが活発化。ソシオのジョルディ・ファレ氏を中心に、署名集めが行われた。
ファレ氏には1万6521名の署名が必要だった。署名集めが始まったのはリーガエスパニョーラ開幕前で、なおかつ2020-21シーズンは無観客開催のためホームマッチをその活動のために有効に使うことができない。当初は「負け戦」だと思われた。しかしーー。
結果として、2万687票が集まった。ソシオのバルトメウ会長への不満は爆発寸前だった。というより、水面下ですでに爆発していたのだろう。でなければ、2万を超える票は集まらない。過去、1998年にジョゼップ・ルイス・ヌニェス当時会長が、そして2008年にジョアン・ラポルタ当時会長が、バルトメウ会長と同じ状況に置かれた。だが署名は必要数に満たず、彼らの政権は続いた。
バルトメウ会長は、いよいよ追い込まれている。バルトメウ会長には、ソシオの不信任投票が行われる前に辞職するという手段が残されている。あるいは、不信任投票の結果を見守るか、だ。バルトメウはクラブ史上40番目の会長にして、初めてソシオによって実質上の解任を宣告される会長になってしまう可能性がある。