■朝の挨拶はアメリカの州名で

 もうおわかりだろう。冒頭のイルスタさんの「ディス・イズ・ユア・オフィス」という言葉は、「自分のオフィスのように気兼ねなく使ってくれ」という意味だったのだ。「あなたの家です」というスペイン語の慣用句を思い起こし、「家」を「オフィス」に代えて、私にわかるよう、英語で言ったのだ。

 このころ、私は毎年のようにアルゼンチンに取材に行き、その取材のサポートを『エル・グラフィコ』誌に頼んでいた(彼らが来日したときには懸命にサポートした)。机を借りて仕事もしたし、フィルムを現像してもらうこともあった。さらには、その時期にケガをしてプレーできていない選手の写真を借りることもあった。毎日顔を出しているために編集部のみんなと仲良くなり、ボクシングの専門家としてすでにアルゼンチンで名高かったイルスタさんとはいろいろな話をした。

 イルスタさんは、別の朝には、私の顔を見るなり「ケンタッキー!」と言った。「なんだそれ?」と聞くと、「あれ、日本語でブエノスディアス(グッドモーニング)」は、アメリカの州の名前と同じじゃなかったっけ?」と言った。私はしばらくポカンとしたが、すぐに「ああ、オハイオのことか」と思った。

 2002年ワールドカップは、もう18年も前のことになる。この大会では、日韓両国の人びとの笑顔が、世界から来たファンや関係者に強い印象を残した。当時のジョゼフ・ブラッターFIFA会長は、「ほほ笑みのワールドカップ」と表現し、両国の人びとの「ホスピタリティー精神」を絶賛した。

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