■見ごたえたっぷりだった両チームの攻撃サッカー

 さて、雨に見舞われてからはパスが思ったように回らなくなってしまったのは、試合を見る側としては非常に残念なことだった。速いテンポのパスを回して攻め合うスタイルの両チームの対決は、実に見ごたえのあるものだったからである。

 試合が途切れる時間が少なく、濃密な展開が続くこともパス・サッカーの良さである。激しい戦いを繰り広げたこの試合でも、前半の追加タイムは「飲水タイム」を含めて2分。選手交代が何度もあった後半でも追加タイムはやはり「飲水」を含めて4分だった。それだけ、ボールデッドの時間が少なく、攻防が繰り返されたことを意味する。

 さて、僕は「パス・サッカーというのはサッカーというスポーツの本質だ」と思っているのだが、どうもこのあたりが若い方々には分かっていただけないようにも感じている。

「『個の力』を上げることこそがサッカーの王道であり、『パス・サッカー』というのはそこからの逃避である」と、そんな風に思われているフシもある。田嶋幸三会長が「Japan’s way」などという奇妙な言葉を持ち出して、日本協会の取り組みをアピールしようとしたことも変に誤解を与える理由だったのかもしれない。

 だが、「パス・サッカー」というのは何も田嶋執行部なり、今の日本協会技術委員会が作り出したものではなく、非常に古い歴史を持つものだ。今から150年ほど前にサッカーという新しい競技が誕生した直後に生まれた新しい大きなトレンドなのだ。

※後編に続く

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