首位をひた走る川崎フロンターレの勝ちっぷりが気持ちいい。J2降格のない今シーズン、超過密日程もあって、多くのチームが5人に増えた選手交代を駆使して首位チームに挑んでくる。もちろん、分析しつくした戦術を駆使しての挑戦だ。受ける川崎は、遠慮のない攻撃サッカーでこれと真正面から相対する。若手選手がどんどん起用されていることもあり、めったにない見ごたえのあるシーズンとなった。本稿では、その面白さ、楽しさの本質に迫る――。
■横浜FMとの白熱の「神奈川ダービー」
J1リーグ第14節の横浜F・マリノスと川崎フロンターレの「神奈川ダービー」。開始2分で横浜FMに先制を許したものの、川崎は余裕をもって逆転して勝ち切ってみせた。“盤石の態勢”は崩れそうもない。
この試合で勝負を分けたポイントは2つあった。
1つは、川崎が早い段階で「徹底してサイドを使う」という意識を共有したこと。そしてもう1つは、後半の立ち上がりに勝負をかけて、そこで実際に2ゴールを奪って勝敗を決してしまった試合運びのうまさ、である。
この試合、横浜FMは川崎のパスコースをしっかり分析し、対策を立ててきた。川崎が前線のFWに付けるボールに対して、チアゴ・マルティンスや畠中槙之輔を始めとするDFがしっかりと受け手をマークすることによって、川崎の中央からの攻めを断ち切ることに成功したのだ。実際、川崎はボールポゼッションでも下回り、前半の飲水タイムまでは横浜FMが試合をコントロールしていた。
しかし、川崎はすぐに両サイドからの攻めに切り替えた。左サイドの三笘薫のドリブルと右サイドの山根視来のオーバーラップ、インナーラップである。川崎の最終ラインは全員が、ボールを奪ったらまず三笘へのダイアゴナルなロングボールを狙った。山根は、素晴らしい判断力で攻撃に絡み、対面の横浜FMの左サイドバック、ティーラトンのお株を奪うような攻撃参加を見せた。
実際、川崎の同点ゴール(33分)は山根が起点となって右サイドで作ったチャンスから大きく左にサイドチェンジ。最後は三笘がドリブルで持ち込んで決めたものだった。そして、48分の2点目は左サイドを大島僚太が突破したもの。3点目も三苫が左サイドで作ったチャンスから右に大きく振って、旗手怜央の折り返しを自らが決めたものだった。
試合展開を見て、早い時間帯から「徹底してサイドを使う」という意識を共有させたこと。それが逆転勝利につながった。