■勝点を取り切れないなかでの変化
転換期を迎えているだけに、結果を残すのは簡単でない。
全34試合のうち11試合を終えた段階での成績は、1勝1分9敗の最下位となっている。カウンターへ持ち込めない局面で相手にブロックを作られると、どうしても苦戦を強いられてしまう。自陣やミドルサードでボールを失い、失点は免れたもののリズムを失ってしまう、という時間帯も見受けられる。
とはいえ、9敗のうち7敗は1点差負けだ。昨シーズン覇者の横浜F・マリノスと、スリリングな撃ち合いを演じた試合もある。不振に喘いでいた当時の鹿島アントラーズからは、1対0の勝利をもぎ取った。
シーズン序盤の戦いについては、「内容は悪くないものの勝点を取り切れていない」という表現がふさわしかっただろう。いまが苦しいのは将来の前進のためで、それがつまり「尺蠖の屈するは、以て信びんことを求むるなり」ということなのである。
工夫ははっきりと読み取れる。3-5-2を基本とするシステムで、相手の背後を突く、サイドチェンジを使う、足元で動かす、といったバリエーションを持ち、多くの選手がボールに関わろうとしている。最終ラインや中盤からもためらいなく選手が飛び出し、攻撃に厚みを生み出すのはこれまでと変わらない。3バックのうちふたりが、同時に敵陣深くへ侵入することもある。
スプリントと走行距離のデータは、昨シーズンまでと変わらずにリーグの上位にある。スプリント回数の平均はFC東京、横浜F・マリノスに次ぐ3位で、走行距離はF・マリノス、大分トリニータに次いで3位である(いずれも第10節終了時)。
ただ、2トップの一角やシャドーで起用される中川寛斗が「スプリントと走行距離が多ければ勝点が拾えるわけではないので、そこは勘違いせずにやっていきたい」と話しているように、走るだけにとどまらないプラスアルファの脅威を作り出すことに、チームは目を向けている。昨シーズン優勝の横浜FM、2位ののFC東京さえ走ることを惜しまないだけに、湘南としてはなおさら攻撃の精度を高めたいところだ。