■独自の立ち位置を築いても欠けていたもの 

 もっとも、スタイルは勝つための手段である。それ自体を表現することが目的ではない。だとすれば、Jリーグのなかで独自の立ち位置を築いた湘南にも、足りないものはあった。

 結果である。18年に24年ぶりのタイトルとしてルヴァンカップを獲得したが、他チームの選手やファン・サポーターからも評価されてきた曺前監督のもとでも、J1リーグ戦では15年の8位が最高成績なのである。

 そこで、今シーズンのスローガンだ。

 湘南スタイルが対戦相手にとってさらなる脅威となるためにも、浮嶋監督は自陣からしっかりとボールを動かすことをチームに植えつけようとしている。ハイプレスからの高速アタックとポゼッションからの崩しを使い分けることで、湘南スタイルを前進させていこうという考えだ。

 おりしも今シーズンは、新型コロナウイルスの感染拡大でリーグ戦の開催期間が圧縮された。厳しいカレンダーのなかで試合を消化していき、猛暑や残暑の厳しさも想定すると、縦に速い攻撃の連続は心身への負担が激しい。ウィズ・コロナの特別なシーズンの乗り切りかたとしても、あるいは世界のサッカーの潮流に照らしても、どちらもできるサッカーへの転換を図るのは、クラブを発展させていく意味でも必要なことだ。

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