■ホーム大敗にサウサンプトンがとった大胆な方策

 2019/20のイングランド・プレミアリーグで最もショッキングだった試合は、10月25日に行われた第10節、吉田麻也がフル出場したサウサンプトンがホームで0-9という信じ難いスコアで大敗したものだ。前半10分に先制された直後にMFバートランドが退場となり、前半だけで5失点。後半もサウサンプトンはなすところなくレスターの攻撃にさらされ続け、4失点を重ねた。この敗戦でサウサンプトンは「降格圏」の18位に落ちた。

 危機的な順位よりも、ホームでのふがいない敗戦を重く見たクラブは、思い切った手を打った。オーストリア人監督のラルフ・ハーゼンヒュットルを解任したわけではない。選手やチームと話し合い、試合当日、10月25日分の選手とスタッフの給料をそっくりチャリティーに寄付することにしたのだ。ただの0-9ではない。「ホームでの0-9」というところを、誰もが非常に重く考えたのだ。

 直後、マンチェスター・シティと戦ったリーグカップとプレミアリーグの2連戦(いずれもアウェー)は連敗に終わったが、1-3、1-2とガッツあふれる内容のある試合を展開し、0-9のショックを払拭した。そしてシーズンの残り14のホームゲームの成績は6勝2分け6敗。「ホーム勝率」は約43%、「ホーム勝ち点率」は約45%。ファンを喜ばせるに十分な成績とした。

 第10節終了時でホームでは1分け4敗と勝ちがなく、アウェーを合わせても勝ち点がわずか8だったプレミアリーグの残り28試合で、サウサンプトンが記録した勝ち点は44。合計勝ち点を52として11位に躍進したのである。そしてこの44勝ち点は、10月25日にホームのセントメリーズ・スタジアムでサウサンプトンを蹂躙したレスターの42を上回るものだった。

「ホームでも強くない」は、けっして「日本サッカーの文化」ではない。アウェーチームが積極的になっている今季、ホームゲームをもっともっと重く考え、勝つことだけにフォーカスする――。それぞれのクラブがより明確にそうした態度を取り、準備をすることが必要なのは間違いない。それによって、それぞれの試合の緊張感も増し、Jリーグのレベルアップにもつながるはずだ。

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