■サポーターの声を力にした浦和レッズ

 Jリーグでは、アウェーでよりホームで弱く見えるクラブもある。1990年代の浦和レッズがそうだった。Jリーグが始まった当初から「最強」と評価されていたサポーターの声援を受けながら、浦和はホームの駒場スタジアムで敗戦を繰り返した。アウェーでは生き生きと動く選手たちが、ホームでは何かを恐れるように手足が縮んでしまうのだ。

 その時代の浦和のキャプテンで、日本代表として豊富な国際体験ももっていた福田正博はこう回想している。

「当時の僕たちはサポーターのパワーをプラスに変えられない試合が多かった。正直なところ、プレッシャーに感じたり、重荷になるときもありました。いまになって思うのは、僕も含めて、当時はあのサポーターの声援に応えられる選手、駒場のピッチに立つ資格のある選手が何人いただろうかということです」(『浦和レッズ25年史 We are REDS!』)

 浦和の選手たちは、サポーターを意識しすぎるほど意識していた。あれだけやってくれるサポーターのためにも絶対に勝たなければならないと考えた。そしてそれがプレッシャーとなり、先制点を取られれば混乱し、先制点を取ってもそれを守りきろうとする意識ばかりが働いて混乱した。

 サポーターの声援を受けていつも以上の力が出せるのか、サポーターの期待に応えようとする余り力を出し切れないのか――。これはメンタリティーの問題である。負のメンタリティーの克服に、浦和では強烈な個性をもったリーダーの登場が必要だった。2004年、監督にギド・ブッフバルトが就任し、田中マルクス闘莉王がDFラインのなかにはいって、ようやく浦和はサポーターの力を自分たちの力に加え、勝利に結びつけられるようになった。

 ホームで勝てれば、チームは確実に優勝争いに加わることができる。たとえば現在のJリーグでホームで全勝、アウェーでは全試合引き分けだったとすると、勝ち点は68になる。立派な優勝ラインだ。ホームで期待を裏切られることが少なければ観客増にもつながる。ホームで勝つことは、プロにとって非常に大事なことなのだ。

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