プレミアリーグ2019/20シーズンは開幕から圧倒的な強さを誇り、残り7試合を残した第31節時点で首位を確定させ、最終的には32勝3敗3引分の勝点99でプレミアリーグ初優勝。トップリーグでの優勝は実に30年ぶりの快挙となった。そのリバプールの強さを、現地でフットボールビジネスを学んだ筆者が、ファイナンスの視点から考察する。
上昇し続けているプレミアリーグの放映権料だが、今回のリバプールの経営の成功についても、当然この放映権料は無視できない。この収入源が近年ビッククラブをさらに大きく成長させている一番の理由なのである。
リバプールの売り上げは、過去3シーズンで驚くべきことに77%増加しており、2億3100万ポンド(約312億円)を記録している。この増加は主に放送権料によるもので、1億3700万ポンドの増加だったが、コマーシャル収入も7200万ポンド増加し、マッチデイ収入も2200万ポンド増加した。過去3年間の2億3100万ポンド(約312億円)という売上の増加ぶりをみると、リバプールはリーグで近年最も成功したクラブと言えるだろう。このすさまじい上昇ぶりをもってしても、まだマンチェスター・Uが稼ぎ出す売上6億2700万ポンド(約846億円)や、マンチェスター・Cの5億3500万ポンド(722億円)には追い付かなかったものの、優勝を成し遂げた2019/20シーズンの成功で、次の収支発表ではこの因縁のライバルクラブを追いつく可能性も出てきた。
結果は、例年でいくと来年初旬に発表されるだろう。売上で世界のクラブをランク付けしている「デロイト・マネー・リーグ」でも、リバプールは7位を維持しており、昨シーズンは順位を2つ上げている。しかしながら、バルセロナの7億4100万ポンド(約1000億円)やレアル・マドリードの6億6700万ポンド(約900億円)にはまだ大きく水をあけられているのも事実である。
2018/19シーズンのリバプールの放映権料による収入は、前年度比19%増の2億5100万ポンドとなり、バルセロナやマンチェスター・Cを抜いて世界最大となった。9900万ポンドに達したチャンピオンズリーグからの放映権料に加え、世界一の放映権料を誇るプレミアリーグからの分配金が、1億5200万ポンドにのぼったのだ。プレミアリーグの海外放映権料分はリーグの順位による傾斜配分がさらに広がるため、今シーズン(2019/20)の優勝でさらに増加するだろう。
チャンピオンズリーグ優勝によるおよそ9900万ポンドの放映権収入は、バルセロナの1億400万ポンドにわずかに及ばなかったものの、トッテナムの9000万ポンド、マンチェスター・Uの8200万ポンド、そしてマンチェスター・Cの8200万ポンドを抜いて、イングランドのクラブとして最高の放映権料を稼いだ。これに加え、世界一のプレミアリーグの放映権料が加わり、世界で最初に2億5000億ポンドを超えたクラブとなったのである。チェルシーとアーセナルが決勝に進出したにもかかわらず、それぞれ4100万ポンドと3400万ポンドしか稼げなかったUEFAヨーロッパリーグとの大きな違いがここにある。