■選手を「よく売れるクラブ」にした

 図2は選手給料の総額(選手人件費)で表したグラフである。

図2の挿入

 コスト増により大幅に減少した4200万ポンド(約57億円)の利益ではあるが、2018/19プレミアリーグの中では最高額であり、マンチェスター・Uの2700万ポンドを大きく上回っている。リバプールの選手移籍による売上高利益は、1億2400万ポンドから4500万ポンドへ7900万ポンドも減少したが、それでも2018/19プレミアリーグで3番目に高い数字である。リバプールの選手移籍による売上が急激に減少したのは、特に驚くべきことではない。昨シーズン記録した1億2400万ポンド(約167億円)の移籍マーケットの売上は、フィリペ・コウチーニョバルセロナ移籍が売上を牽引したものであるからだ。

 リバプールの経営戦略の中核は、選手を「よく売れるクラブ」になったことだろう。つまり良い選手補強ができ、リバプールを離れるときには高い移籍金できっちり売っているのである。過去5年間で、彼らは選手移籍ビジネスから3億600万ポンド(約413億円)もの大金を稼ぎ、これはチェルシーの3億3200万ポンドに次ぐ数字で、他の「ビッグ6」と比較してもはるかに上を行っている。リバプールの選手移籍ビジネスによる利益は過去6年で5倍になり、過去3年間だけで見ると、実に2億700万ポンド(約279億円)の利益を上げている。過去の損失総額と比較すると、明らかに近年のクラブの財務状況に安定的かつ持続的な改善が見られる。オン・ザ・ピッチの成功を支えていたのは、この選手移籍ビジネスが安定的に利益を生んでいることが大きい。

※後編につづく

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