プレミアリーグ2019/20シーズンは開幕から圧倒的な強さを誇り、残り7試合を残した第31節時点で首位を確定させ、最終的には32勝3敗3引分の勝点99にてプレミアリーグ初優勝。トップリーグでの優勝は実に30年ぶりの快挙となった。そのリバプールの強さを、現地でフットボールビジネスを学んだ筆者が、ファイナンスの視点から考察する。
現在、最も新しい経営情報として、2018/19シーズンの決算が存在するため、ここでのリバプールの経営分析をしていきたい。2018/19シーズンはUEFAチャンピオンズリーグで6度目の優勝を果たしたシーズンを含み、プレミアリーグでは優勝こそ逃したが、最多得点となる97点を獲得してマンチェスター・Cに次ぐ2位となった。最終節までもつれ込んだ優勝争いは多くのファンを魅了しただろう。
そのピッチ上の成功に隠れて、リバプールの経営はどのようになっていたのだろうか。リバプールの利益(税引前)は、昨シーズン比で1億2500万ポンド(約169億円、1ポンド135円換算)から4200万ポンドに減少し、選手移籍による売上高利益は7900万ポンドから4500万ポンドに減少したが、売上高は2017/18シーズンと比較して、17%に値する7800万ポンドも増加して「5億3300万ポンド(約720億円)」と記録的な快挙となった。これだけの売上高を残したにも関わらず利益が前年比よりも減少したのは、選手への大規模投資によるコスト増によって相殺されたことになる。近年リバプールは他のライバルクラブに負けない大型補強をするようになったのである。
サッカークラブの収入の3本柱となるのが、放映権料、コマーシャル収入、マッチデイ収入の3つだ。
リバプールの3本柱の収益はすべて増加し、特に、放映権料はチャンピオンズリーグの優勝を理由に4100万ポンド(19%)増加して2億6100万ポンド(約352億円)に達した。また広告収入(コマーシャル収入)は3400万ポンド(22%)増加して1億8800万ポンド(約254億円)に達した。試合日によるチケットや飲食などの「マッチデイ収入」は300万ポンド(4%)高い8400万ポンド(約113億円)となった。オン・ザ・ピッチでの成功は3大収入源全てを押し上げる形となった。
しかしながら、リバプールのオン・ザ・ピッチでの成功の「代償」は上昇するコストであり、チームへの投資では選手への給料が4600万ポンド(18%)増加して3億1000万ポンド(419億円)に膨れ上がっている。