■治安は悪いが助け合いの精神が根づいた社会
新型コロナウィルスのパンデミックに見舞われたブラジル。感染者数は80万人を、死者は4万人を超えた。
ブラジルは治安が悪い一方で、人々はとても優しい。人懐こくて、他者との間に壁をつくらない。
筆者は2014年ワールドカップを現地取材したとき、運よくサンパウロのマンションに居候させてもらった。
前年の旅行中に知り合った若者が、「サンパウロに来たら、いつでも泊っていいよ」と声をかけてくれたのだ。こんなこと、ブラジルでなければそうそう起こるものではない。
この国を旅すると、助け合いの光景を頻繁に見かける。
階段でお年寄りに手を貸したり、屋台で軽食を買ってホームレスに差し出したり。
「ホームレスに施しをするのは、富の再分配の一環なんだ」
居候宅の若者の言葉が、いまも胸に残っている。