■孤独なジャパン

 サッカー狂の視点からすると、ラグビー代表チームの強化のつらさは、近隣に強力なライバルがおらず、定期的な公式国際試合が強化に有効でないことにつきる。ジャパンはアジアでは圧倒的に強すぎるのだ。

 サッカーの場合は、まず韓国がいる。この忌々しい宿命のライバルは、常によい選手を次々に輩出し、私たちに匹敵する代表チームを作ってくる。また、車範恨(チャボムグン)、朴智星(パクチソン)、孫興民(ソンフンミン)といった世界屈指のタレントのランクは、私たちの英雄たちよりも、若干優れているといわざるを得ないかもしれない。ちょっと、いやだいぶ悔しいけれど。

 いや、韓国だけではない。アジアカップ、ワールドカップ予選では、多くのライバルと覇を競うことができる。イラン、豪州、ウズベキスタン、サウジアラビア、UAE、カタール、タイなど、様々な国がそれぞれの個性や特長を活かした強化を行い、私たちの前に立ち塞がる。これらのライバルたちと、互いに尊敬の念をもって戦うタイトルマッチは、強化という視点からも有効だし、私たちサポーターの大いなる娯楽となっている。その環境下で、92年アジアカップを初制覇して以降、30年近く私たちはアジア最強国として君臨してきた。

 けれども、ジャパンはアジア内では圧倒的に強過ぎるのだ。韓国や香港とテストマッチをしても、大差で当たり前のように勝ってしまう。近隣にライバルがおらず、地域の国際大会が強化につながらないのだ。

 一方で列強各国は、毎年開催される世界的タイトルマッチで切磋琢磨している。欧州はシックスネーションズ(イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリア)、南半球はザ・ラグビーチャンピオンシップ(ニュージーランド、豪州、南アフリカ、アルゼンチン)。これらに準じた日本が出場権を持つ大会として、南太平洋島嶼国のフィジー、サモア、トンガなどが参加するパシフィックネーションズカップという大会がある。だが、南太平洋島嶼国は、国外でプレーする選手が多く、この大会にはベストメンバーでは臨みづらいのが残念なところだ。

 余談ながらネーションチャンピオンズシップという構想があった。いわゆる欧州のシックスネーションで1ブロック、南半球4強国に加え、日本とUSAで1ブロック。両ブロックの上位で毎シーズン、世界一を決めようとする構想だった。日本協会がこの構想に賛同した一方で、フィジーなど南太平洋島嶼国や、ジョージアなど欧州の2番手国が強い反発を表明。ならば昇格、降格を加える大会にするかとの議論となると、イタリアなど複数の欧州国が反論。結局まとまらなかった。継続的な公式国際大会の開催には、公平性が必須なのだが、ラグビーはサッカーと比較して、本格強化をしている国が少ないため、代表チームの強さと公平性のバランスがとりづらいのだ。

 こう語ると身も蓋もないが、ジャパンは常に孤独な環境で強化するしかない、ということになってしまう。

※後編に続く

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