■スーパーラグビーとサンウルブズ
ここまで集中強化について疑問を呈してきた。次回23年大会に向けて、19年地元大会での強化の再現はそもそも不可能なのだ。サンウルブズがスーパーリーグに参加するのは、この20年度が最後になり、21年以降は参加できないからだ。さらにいうと、今年のサンウルブズは例年とは随分異なる体制だった。例年はジャパンの選手がズラリと並んでいたが、今シーズンは2部リーグの選手、大学所属の選手、そして日本に縁があった外国人選手での編成となっている。これはトップリーグと日程がバッティングしているためだ。本件については後述する。
スーパーラグビーへの出場権喪失については、日本協会から明確な説明はないようだ。ただ、森喜朗氏を含めた協会長老たちがスーパーラグビー継続に消極的、スーパーラグビー当局より多額のキャッシュ提供を求められた、との報道をよく目にする。まあ、日本ラグビー協会サイドも一枚岩ではないということだろう、これは意見の多様性と言う視点では健全なのかもしれない。
ただ、スーパーラグビー当局が、サンウルブズに対して、かなりのもどかしさを感じているのは、理解できる。彼らは、国境をまたいだクラブ同士の厳しい戦い、最高レベルの娯楽を作ろうとしている。
しかし、サンウルブズは、そのような意識で大会に臨んでいただろうか。
まず上記した、今シーズンの編成は論外だ。COVID-19による中断がなくスーパーラグビーが予定通り開催されていたら、例年以上に連戦連敗を重ね、大変なスキャンダルになったかもしれない。
それは論外にしても、昨シーズンまでのサンウルブズは、かなり細かく選手を入れ替えて戦ってきた。これは、上記ように、15年ワールドカップ以降代表選手に真っ当なオフを提供できていなかったため、選手を幾度か入れ替え、休養をとらせる必要があったためだ。その結果、他国のチームのチーム員数が30~40人程度なのに対し、サンウルブズは毎年50人以上、19年シーズンに至っては70人の選手が登録されている。サンウルブズはスーパーラグビーを単に選手の試合経験の場として利用し、厳しいタイトルマッチを勝ちには行っていなかったといわれてもしかたがない。「One Team」とは、ほど遠い陣容だったのだ。
乱暴にたとえてみる。諸事情で、東南アジアの準代表チームが、Jリーグに参加したとする。しかし、そのチームが常にベストとはいえないメンバーで試合に臨み、連戦連敗だったとしよう。あなたは、そのようなチームと、継続的に戦っていこうと思いますか。
日本サイドから見ても、2月から7月という長期期間にわたり、ジャパンに準ずるチームで、他国のクラブチームと戦うリーグ戦に参加するのが正しいことだろうか。単に国内大会の価値を損ねるのみならず、先ほども述べたがサンウルブズに選考されない選手の強化の機会を奪うだけではなかろうか。
いくら厳しい強度の高い試合を経験できるからといって、ジャパンに準じるチームが、クラブの大会に出ようとすることに無理があったのだ。これまた、別にたとえると、Jリーグ選抜が、半年間Jリーグを休んで、毎試合毎試合選手を入れ替えながら、欧州チャンピオンズリーグに出場しようとするような不自然な活動だったのだ。
一方で、神戸製鋼コベルコスティーラーズやサントリーサンゴリアスと言った国内のトップチームが、スーパーラグビーに参画するというならばステキなことには思える。ただし、いずれのチームが参画するのか、入れ替えはどうするのか、などの問題を解決していかなければならないのだが。