現地時間7月11日に行われた北中米ワールドカップ(W杯)の準々決勝。アルゼンチン代表が延長戦の末に3-1でスイス代表を下したこの試合で、勝敗を大きく分ける劇的なターニングポイントがあった。スイスの攻撃を牽引していたFWブレール・エンボロが、判定の“大逆転”によって涙の退場処分を受けたシーンである。
今大会、スイスはグループBを2勝1分けで首位通過し、決勝トーナメントでもアルジェリア(2-0)、コロンビア(0-0からのPK戦)を次々と撃破する快進撃を見せていた。
前回王者アルゼンチンとの大一番でも、前半10分にコーナーキックから先制を許したものの、決して怯むことなく徐々に反撃。後半22分にはダン・エンドイェが見事な同点ゴールを奪取し、王者をあと一歩のところまで追い詰めていた。”事件”が起きたのは、試合を振り出しに戻してからわずか5分後のことだった。
相手陣内右サイドのタッチライン際でボールをキープしようとしたエンボロが、背後からアルゼンチンのレアンドロ・パレデスのプレスを受けて転倒。主審は即座に笛を吹き、パレデスに対してイエローカードを提示した。スイスにとっては貴重なセットプレー獲得……かに思われた。
しかし直後、「対象選手間違い」の可能性からVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入。主審がピッチ脇のモニターでオン・フィールド・レビューを行った結果、運命は大きく反転した。
スロー映像が捉えていたのは、エンボロがパレデスの接触よりも前に自ら足の力を抜き、倒れにいくような不自然な動きだった。
ファウルをもらうために意図的に転倒したり、大げさに痛がったりして主審を欺く「シミュレーション」行為。高精度のカメラが見つめるVAR時代において、この反則は決して見逃されない。結果としてパレデスのイエローカードは取り消され、一転してエンボロに対してシミュレーションによるイエローカードが出し直されたのだ。
前半44分にすでに1枚目の警告を受けていたエンボロは、この2枚目のイエローで無念の退場処分に。ファウル獲得の安堵から一気に突き落とされた彼は頭を抱え、両手で顔を覆って号泣。チームメイトに慰められながらピッチを去る姿は、あまりにも痛々しく可哀想な光景だった。






























