絶対に勝点3が欲しいこの大一番を前に、日本サッカー界屈指の「ヘディングの名手」が立ち上がった。現役時代はその圧倒的な空中戦の強さから“頭将”の異名を取り、1998年フランス大会などワールドカップに2度出場した元日本代表DFの秋田豊氏だ。
プロ選手として恵まれた特別な身長があったわけではないにもかかわらず、長年世界の舞台で強靭なストライカーたちと戦い抜けたのは、正確にボールの軌道を読んで一歩先に落下地点へ入る予測力と、圧倒的な滞空時間の長さ、そして目をつぶらずにボールをしっかりミートする緻密な技術の賜物である。
日本が歴史上初となる決勝トーナメント進出を決めた2002年日韓W杯のチュニジア戦において、秋田氏はピッチ外から大声で鼓舞し続け、若いチームに闘魂を注入する精神的支柱として快挙を裏で支えた。空の覇者たる“頭将”の目には、オランダ戦での小川航基の同点ヘディングはどう映ったのか。次戦の攻略法とともに、熱く、そして鋭く解説する!
ワールドカップ準優勝3回を誇るオランダ代表との初戦、日本代表は慎重な戦い方を選択した。これまでのように前線から積極的なプレスをかけてボールを奪いにいくのではなく、全体を「5-4-1」にセットする強固な守備ブロックを形成して構えたのだ。
相手にボールを保持される展開が続いたものの、0-0のまま前半は終了。しかし、後半6分に手痛い失点を喫してしまう。フリーキックの2次攻撃から、怪物フィルジル・ファン・ダイクにヘディング弾を叩き込まれたのだ。
後半12分に中村敬斗が見事なシュートを決めて一度は追いついたものの、同19分に再び勝ち越しゴールを浴びてしまう。
1-2のまま時計の針は進み、万事休すと思われた後半44分。ついに劇的な同点ゴールが生まれる。左コーナーキックから途中出場の小川航基が頭で合わせ、コース上にいた鎌田大地が絶妙に軌道を変えてネットを揺らした。
初戦という独特な緊張感の中、2度もリードを許す苦しい展開をはね除けて貴重な勝点1を獲得した日本代表。勝点4を獲得すれば決勝トーナメント進出は濃厚と計算できる今大会のレギュレーションを踏まえれば、まずは上々のスタートと言えるだろう。
気がかりな点があるとすれば、負傷で途中交代した久保建英の状態だ。南野拓実、三笘薫、遠藤航と主軸を欠く中で、さらに久保まで失うことになれば戦力ダウンは計り知れない。
一方、次戦の相手であるチュニジア代表は、初戦のスウェーデン代表戦(15日開催)で1-5と大敗。翌日には監督の解任が発表されるという大激震に見舞われている。
執念のドロー発進となった日本代表と、後がない勝点0のチュニジア代表。運命の第2戦はいかなる展開になるのか? ここからは秋田氏の言葉でひも解いていこう。
■途中出場の小川航基が「チームのカンフル剤」に!
オランダ代表戦は、南野拓実選手、三笘薫選手、そして遠藤航選手といった中心選手が抜けた影響や、初戦の緊張感のためか、内容的には厳しい部分もありました。
しかし、チームはそういう苦しい経験を積み重ねて成長していくものです。しかも強豪国のオランダ代表から2点を奪って引き分けたのですから、選手たちも「これくらいできるんだ」という手応えを得たはずです。3位でも突破の可能性があるとはいえ、初戦で負けるのと引き分けるのとでは天と地ほどの違いがありますから、土壇場で追いついた勝ち点1の価値は計り知れません。
公式記録の得点者は鎌田大地選手ですが、途中出場した小川航基選手が見事なヘディングで同点ゴールに絡んだのは、チームにとって素晴らしい刺激になったでしょう。
日本代表が大会を通じてチーム力を高めるには、サブに回っている選手のモチベーションアップが欠かせません。代表ではサブでも、所属クラブに帰ればみんな主力であり、エースです。プライドを胸に秘めて控えに回っている選手たちに「自分にも絶対にチャンスがある」と感じさせなければ、チームはまとまりません。
長丁場になるワールドカップを勝ち抜くには、これが最も必要な作業となります。メンタル的なケアはベテランの長友佑都選手に期待しているのでしょうが、実際に出番を得て結果を残すことに勝る特効薬はありません。


























