大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第181回「ワールドカップはアディダスのための大会?」(4)オランダ代表のスーパースター・クライフが1人だけ違うユニフォームだった「納得の理由」の画像
ヨハン・クライフは、かつて2本線のアディダスのユニフォームでプレーした。撮影/原悦生

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、3本線の憎いやつ。

■反アディダスの男

 アディダスのユニフォームを着ながら「3本線」をつけなかった4チームは、イタリア、アルゼンチン、ウルグアイ、そして地元西ドイツ。だが南米の2チームは、背番号を「3本線」にした。

 この大会を前に、現在では考えられない事件が起こった。西ドイツと並んで大会の優勝候補と目されていたのがオランダだった。オランダもアディダスと契約し、3本線をつけたユニフォームを着ることになっていた。しかし、そのスーパースターであるヨハン・クライフが、あろうことか、「アディダスの3本線なんかつけてプレーできない」と主張したのである。

 クライフは「プーマ」とシューズの契約を結んでいたのだが、その契約には、「他のスポーツブランドを宣伝する行為は慎む」とあり、3本線のついたユニフォームを着なければならないのならワールドカップには出場できないと言い張った。困り果てたオランダ・サッカー協会がアディダスに相談を持ちかけたときには、このニュースは誰もが知るところとなっていた。

「仕方がない」というアディダス側の言葉に、オランダ協会はホッと胸をなでおろした。アディダスのせいでクライフがワールドカップに出場しないということになったときの、ファンからの批判を考えてのことだった。

 結果として、クライフには1人分だけ「2本線」の特別なユニフォームが作られた。シャツの両袖だけではない。パンツのサイドに入れられたラインも2本線、ストッキングの上部に入れられたのも2本線だった。先にも後にもないケースである。

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