■「こんな写真の使い方、見たことない!」

 ところで、私が平生で「撮ったぞ!」と心の中で叫んだ写真である。私は、GKがジャンプしていて、ボールがゴールに入る瞬間をとらえたと思っていたのだが、東京に戻って現像されてきた写真を見て、大いにがっかりした。望月もGKもボールも、そしてゴールの枠も入っていたのであるが、ボールは右足を振った望月から数メートルしか飛んでいなかったのである。GK高田はまさにジャンプしようとしている瞬間。つまり、おそらくほんの数分の1秒ほどシャッターが早かったのである。

 もちろん、今井さんが使う「モータードライブ」付きのカメラで連続撮影していれば、決定的な瞬間の写真となっただろう。しかし私が渡されたのは、シングルシャッターしか切れず、1枚撮ったらレバーを回してフィルムを1コマ分送らなければならないものだった。

 だが、グラビアページをつくるのは、「駆け出し編集者」と言っても、私の独断である。もちろん、今井さんが撮影した永大の中村道明の写真を大きく扱ったが、私は、その下に、自分で撮った望月のゴールシーンも入れることを忘れなかった。しかもその写真は、縦4センチに対して横はページいっぱい、16.5センチもあるものだった。

「こんな写真の使い方、見たことない!」と、今井さんが怒ったのは、2月の中旬、『サッカー・マガジン』の1975年3月号が店頭に並んでから。後の祭りである。

 こうして、51年前の私の「寒くて熱い冬」は終わったのである。

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