大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第180回「51年前の寒くて熱かった冬」(5)重なった「読売とトヨタ」試合前の姿、1週間後に再び見せつけた「一部の厳しさ」の画像
シュートを決める富士通の望月長治。もうちょっとシャッターが遅ければ、かなりいい写真だと思うのだが…。©Y.Osumi/Baseball-Magazine-sha

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、忙しかった正月の記憶。

■読売クラブを抑えた「気迫」

 ようやく除雪が終わり、キックオフは3時45分と伝えられた。読売の選手たちは更衣室に入って準備を始め、試合に備えた。そのころ、トヨタの選手たちは、背中から湯気を上げ、肩で息をしながらユニフォームに着替え、与那城のドリブルにどう対応するか、声高に話し合っていたに違いない。

 この試合、今井さんは「予想」に従って読売が攻めるゴール裏に位置し、私は再び標準レンズ付きの1台のカメラとともにトヨタの攻めるゴール裏に陣取った。ゴール裏にはピッチ内からかき出された雪が積まれており、座り込むことができないのを見たトヨタスポーツセンターの職員が、折りたたみイスを持ってきてくれた。

 そしてこの試合唯一のゴールは、私のカメラに収まったのである。前半終了間際、トヨタはPKを得、キャプテンの泉政伸が冷静に左隅に決めたのだ。読売が圧倒的に攻めるのではないかと思われた試合だったが、トヨタの選手たちの気迫は鬼気迫るものがあり、激しいタックルにリズムを壊された読売は効果的なパスをつなぐことができなかった。

 驚いたのは、トヨタの選手たちの底知れぬ体力だった。試合前に何時間も除雪作業を行ったとは思えないほど、走り、戦った。そのプレーぶりを見ていて、トヨタの選手たちが除雪作業をしている間に談笑していた読売の選手たちの姿が重なった。キックオフの瞬間、ピッチに立ったときに、すでに勝負は決していたのではないかと思った。

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