■「皇帝がやって来る!」

 ところが、この年の正月にはとんでもないビッグイベントが待ち構えていた。「こたつで高校サッカー」どころではない。バイエルン・ミュンヘンの来日である。前年の1974年ワールドカップで優勝した西ドイツ代表チームの中核選手たちが所属するクラブ。中でも西ドイツ代表の主将であり、「皇帝」のニックネームをほしいままにしたフランツ・ベッケンバウアーは、オランダのヨハン・クライフと並んで当時世界最高の選手だった。

 ベッケンバウアーだけではない。ワールドカップ決勝戦で決勝ゴールを挙げ、その晩に西ドイツ代表からの引退を宣言したゲルト・ミュラー、世界一のGKゼップ・マイアーなど、バイエルンは信じ難いほどのスターぞろいだった。

 後に世界的なスーパースターとなるカールハインツ・ルンメニゲはこのとき19歳。バイエルンではほとんど1軍の試合に出場した経験はなかったが、スピードがあるのを買われ、将来性を期待されてこの遠征に連れてこられていた。日本に向けて出発しようとしたミュンヘン空港で、そのルンメニゲがベテラン選手から「お前、誰?」と聞かれたという話も伝わっていた。

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