■ベッケンバウアー < アイドル

 私は企画担当者としてその場に同席し、インタビューが終わった後、ベッケンバウアーにお礼として大きな日本人形を贈る役割だった。東田さんや他のスタッフはインタビュー後にその場でベッケンバウアーにサインをもらっていた。私といえば、大のサッカーファンながら、『サッカー・マガジン』で仕事を始めた21歳のときから「サッカー選手からはサインをもらわない」という主義を貫いており、このときも握手したり、英語で短い会話はしたものの、それだけだった。

 ところが…。このインタビューが終わって部屋を撤収し、階下に降りようとエレベーターに乗ると、そこに小さな帽子を被った若い女の子が乗っていたのである。当時、人気絶頂の香港人(ということは英国国籍)アイドル、アグネス・チャンだった。私は思わず脇にかかえていた取材ノートの最終ページを出し、サインをねだっていたのであった。

つづく

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