■早川が披露した「完成度」
これほど派手な「神業」ではなかったが、この10分ほど前にも印象深いゴールキーピングがあった。前半23分、東京Vのカウンターアタック。自陣左で鹿島FW鈴木優磨からボールを奪った東京VのMF深澤大輝が内側に持ち出し、右のスペースへ見事なパス。スピードを生かして東京VのMF松橋優安が前進する。ゴール前ではFW染野がDFとの駆け引きをして左ポスト前でフリーになり、そこに松橋の正確なクロスが飛ぶ。ここからの「右・左」は、メインスタンド(あるいはテレビ画面)で見ての表現である。
松橋がクロスを送った瞬間、鹿島GK早川は当然ゴールの右側に寄っている。しかしボールが約30メートルを飛ぶ間に早川は素早く数歩のステップを踏んで左に移動、染野がヘッドしようとしてジャンプした瞬間にはそのシュートに対応するポジションを正確に取り、両足をグラウンドにつけていた。染野のシュートはゴールの右を突いたが、早川は余裕を持ってセーブした。
染野のヘディングシュートは強くはなかった。しかし早川の動きの逆を突いており、コースとしては理想的だった。早川のセーブは簡単のように見えたかもしれない。しかし、準備(左への移動と、完全にストップしてのシュートへの自然体での構え)がほんのわずかでも遅れていたら、左へ動きながら右に跳ばなければならず、染野のヘディングのコースから見てゴールに決まっていてもおかしくないシーンだったのだ。このプレーに、早川というGKの「完成度」を見る思いがした。













