■「目→手」という回路
0-0で迎えた前半32分、東京Vが波状攻撃をかけ、MF森田晃樹とのワンツーでFW染野唯月が正面左からペナルティーエリアに侵入した。シュートを阻止しようと右から入ってきた鹿島DF金太鉉(キム・テヒョン)の逆を取って右にかわすと、ゴール前10メートルで完全にフリー。低く強いシュート。だが、これを早川がストップしたのだ。
染野が完全にフリーでシュートの態勢に入っても、早川はまったく動かなかった。両足をグラウンドにつけて両手を低く軽く開き、リラックスした「自然体」の態勢を取っていた。そしてシュートの瞬間に右手をわずかに上げてボールをストップしたのだ。そのボールは、早川の体の下に収められた。
フリーのシューターに対して、足元に飛び込んだり、両手両足を広げてハンドボールのGKのように相手に向かっていくGKが多いが、この早川の「自然体」こそ、あらゆるシュートに対応する最も良いゴールキーピングだと、私は考えている。シュートを見て反応するわけではない。シューターの姿勢や蹴り方などからコースを「察知」し、その瞬間にボールのコースに手や足が出ていることでシュートを止めるのである。
「目→脳(判断→命令)→手」ではなく、「目→手」という感覚に近い回路が、早川にはできている。そうでなければ染野のシュートを防ぐことはできなかっただろう。













