■鹿島のFWに求められる仕事

 今シーズン、J1リーグで9年ぶりの優勝を果たした鹿島アントラーズ。育成部門でも、多くの代表クラスの選手を育てており、最も成功を収めているクラブのひとつである。とくに、多くの優れたFWを送り出しているのは特筆に値する。

 たとえば、柳沢敦コーチが育てたユース出身の徳田誉は、すでにトップチームの一員として地位を確立。2027年にウズベキスタン・アゼルバイジャンの共同開催として行われるU-20ワールドカップを目指して立ち上げられたばかりのU-18日本代表にも選出され、SBSカップで活躍した(徳田がU-18代表に選出された報道を見て、むしろ「ああ、徳田はまだ18歳だったんだ」と驚いたくらいだ)。

 その徳田に続いて、吉田や平島といった攻撃的プレーヤーを輩出しており、さらに下の世代にも高木瑛人という逸材もいる(U-16日本代表)。これほど多くの、いかにもFWというタイプのアタッカーを育てているのは素晴らしいことだ。

 鹿島という勝負に徹する哲学を持ったクラブだけに、アタッカーと言えども守備面での仕事も強く求められる。

 実際、神戸とのファイナルで両チームを分けた最大の差は、鹿島の前線からの守備だった。相手にボールを奪われた瞬間の切り替え(いわゆるネガティブ・トランジション)では、神戸もハイレベルだが、鹿島はその切り替えの早さで神戸を大きく上回っていた。

 そして、FWがファーストディフェンダーとなってプレッシャーをかけ、相手にかわされたとしても、鹿島の選手はけっして足を止めることなく2度追い、3度追いを繰り返す。

 こうして、鹿島はゲームを完全にコントロールした。

 それでも、1点を追う神戸は後半に入ってからパスがつながるようになり、チャンスをつくり始める。そして、神戸のパス回しに対して後手を踏むようになった鹿島は中盤でのファウルが多くなり、57分にはFKからDFの原蒼汰がヘディングシュートを決めて神戸は同点に追いつくことに成功した。

  1. 1
  2. 2
  3. 3