唯一残った3強は「準備してきた」セットプレーで逆転!S広島レジーナは「育成型チーム」を相手にゲームを支配するも…【女子サッカー日本一決定戦「皇后杯ベスト4激突」勝敗の分岐点】(2)の画像
7月のE-1選手権で「なでしこジャパン」にも選出された、広島レジーナの中嶋淑乃(写真)が躍動した!撮影/原壮史(Sony α1使用)

 皇后杯のファイナリストが決まった。INAC神戸レオネッサとサンフレッチェ広島レジーナが、元日の国立競技場で激突する。両チームが激闘を繰り広げた準決勝2試合の模様を、日本の女子サッカーの「今後の展望」とともに、サッカージャーナリスト後藤健生が検証する!

■漂った「番狂わせ」の予感

 そして、その後もいくつかのチャンスをつくり、スタジアムにも「もしかしたら」という空気が流れた。

 だが、皇后杯での初失点にもINAC神戸レオネッサは動じなかった。

「準備してきた」というセットプレーから2点を奪って逆転して、伊賀FCくノ一三重に傾きかかった試合の流れを引っ繰り返してしまったのだ。

 65分にはゴール正面のFKを松原優菜が浮かせて、走り込んできたDFの太田美月が頭で合わせて同点。そして、I神戸の宮本ともみ監督は「点が取れる選手」としてベテランの高瀬愛実を投入。75分には、その高瀬が逆転ゴールを決めた。

 今度もFKからだった。左サイドからのFKを伊賀のGK後藤優香が弾いたところを成宮唯が折り返してゴール前に混戦をつくり、こぼれたボールを高瀬が決めたのだ。

 前半から守備に走り、前半の終わりから後半のはじめの時間帯にかけて前からプレッシャーをかけて善戦した伊賀には、もう反撃のエネルギーは残っていなかった。何度か、ロングカウンターのチャンスをつくりかけたもののI神戸のゴールは遠く、89分にはクリアボールを拾われて、日本代表にも定着しつつあるI神戸のFW吉田莉胡にダメ押し点を奪われた。

 終わってみればI神戸が3対1で確実に勝利した試合だったが、伊賀の健闘で後半までスリリングな展開となった。

 I神戸はまさかの先制ゴールを奪われた場面でもまったく慌てなかった。「いざとなったら、セットプレーで点が取れる」という意識があったからなのだろう。相手の背後を取ることでセットプレーの数も増やし、そして、デザインされた形で2点を決めてみせた。

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