■RB大宮は失点から流れを失い……
リーグ戦の順位で千葉に劣るRB大宮は、決勝進出へ大きく近づいた。3対0としたのは後半開始直後だったものの、ここから同点へ持ち込まれるとは考えにくかった。
千葉が60分の選手交代で、戦況を動かしてきた。RB大宮の宮沢悠生監督も、70分に動く。右SB関口凱心と左MF泉を下げて、MF和田拓也とMF谷内田哲平を起用した。
その直後に、失点を喫した。これは千葉FWカルリーニョス・ジュニオのシュート技術をほめるべきものだったが、より根本的な問題は試合の流れを変えられないことだった。千葉の選手交代とは対照的に、RB大宮の交代は奏功しなかった。
37節の徳島ヴォルティス戦で、RB大宮はわずか5分間で連続失点し、1対2で敗れている。この反省を受けて臨んだ38節のレノファ山口FC戦では、42分と54分に失点した。後半は試合の流れを相手に持っていかれ、J2残留争いをしていた相手に2対3の逆転負けを喫した。
カルリーニョス・ジュニオに被弾した直後、RB大宮の選手たちは円陣を組んだ。
まだ2点のリードを奪っている。
慌てる必要はない。
無理をしてつながずに、ときには大きくクリアしてもいい。
そういった確認をしたのだが、千葉を押し返せないのである。71分の1失点目から6分後の77分、2点目を決められてしまった。
計算外だったのは、アルトゥール・シルバの負傷交代だ。中盤右サイドを中心にプレーする彼は、圧倒的なボール奪取力と推進力で、攻守両面において重要な役割を担っていた。ところが、75分に左足がつってしまい、タンカでピッチ外へ運ばれた。ひとり少ないその間に、2失点目を喫したのだった。
アルトゥール・シルバは一度ピッチへ戻ったが、81分に交代を余儀なくされた。DFラインでは、市原が59分に左足を気にして治療を受けている。ベンチは交代選手を用意したものの、ゲームキャプテンを務める20歳は試合終了までピッチに立ち続けた。
しかし、痛みはあったのかもしれない。83分の3失点目のシーンで、市原は相手FW呉屋大翔に空中戦で競り負けている。足の痛みではなくポジショニングに問題があったのかもしれないが、いつもの彼なら跳ね返しておかしくない場面だった。そして、ここでクリアできていれば3失点目はなかった。
左SBでフル出場した下口稚葉は、「正直みんな足にきていて、足がつっている選手も多かった」と明かした。自身も「80分くらいにつっていた」という。プレーオフ準決勝という特別な緊張感のなかで、選手たちは知らず知らずのうちに疲弊していったのだろう。
主力級を何人も欠いていた。CBでキャプテンのガブリエウはシーズン途中に戦列を離れ、GK笠原昂史と右SB茂木力也がシーズン最終盤にケガで離脱した。そしてこの日は、リーグ戦7得点の豊川、同6得点のオリオラ・サンデーが不在だった。
それでも3点を先行して、決勝戦へ近づいたのだ。J2復帰1シーズン目の歩みとしては評価できるものだが、J1昇格の黄金の好機を逃した事実は重い。
後半のRB大宮は、アルトゥール・シルバが決めた3点目の1本しかシュートを放っていない。そして、失点後にゲームを落ち着かせられない課題が、この日も露呈してしまった。3対0から3対4に引っ繰り返され“フクアリの悲劇”に、必然の側面があったのも事実だ。








