■活かされた「4度のJ1リーグ制覇」の経験

「常勝軍団」と称され、J1リーグ最多、8度の優勝回数を誇る鹿島だが、最後にリーグ優勝を遂げた2016年からすでに9年が経過している。監督が石井正忠氏で、小笠原満男さんがキャプテンという時代だった。東京V戦で先発した中で、当時を知る選手は植田直通三竿健斗、そして鈴木優磨の3人だけだ(そのほか、知念慶川崎フロンターレ時代に優勝を経験している)。

 9年ぶりの優勝を目前にして、平常心で戦うことはやはり難しかったようだ。記者会見の席で、鬼木監督は「プレッシャー」という言葉を繰り返した。

 しかし、その鬼木監督は、川崎の監督として4度のJ1リーグ制覇を成し遂げた経験を持っている。監督としての「優勝4回」は森保一サンフレッチェ広島=現日本代表監督)、オズワルド・オリヴェイラ監督(鹿島)の各3回を上回るJリーグ最多記録である。

 そして、鬼木という指導者はもともとが勝負師である。

「まだ、我慢だ。いつか勝負どころがやって来る」と、カードを切るべきときを待ったのだ。

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