サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、日本サッカー界の大事なカップについて。
■イングランドからの「寄贈品」
「天皇杯JFA第105回全日本サッカー選手権大会」。J1のFC町田ゼルビアとヴィッセル神戸が準決勝をともに2-0のスコアで勝ち、11月22日に東京・国立競技場で行われる決勝戦に進んだ。町田は初の決勝進出。神戸は第99回(2019年度)、第104回(2024年度)に次ぐ3回目の決勝進出で、過去2回はいずれも無失点(2-0、1-0)で勝って優勝、3回目の優勝を目指す。
ところで、2014年度の第94回大会以来、開催スタジアムや試合日が不安定だった天皇杯決勝は、来年度から原則として再び「元日・国立」に固定される予定だという。私はJリーグ閉幕の翌週、5月の最後の週末に決勝をしてシーズンが終わるのが、「天皇杯」というタイトルにはふさわしいと考えているのだが、日本の「年度」をまたぐことになり、難しい問題がさまざまあるのだろう。
さて、第105回(うち9回中止)という歴史を持つ天皇杯だが、誕生当時は「天皇杯」ではなく、むしろ「FA杯」と言うべきだった。「FA」とは「The Football Association」すなわち、「イングランド・サッカー協会」のことである。この大会の最初の優勝カップは、イングランド・サッカー協会から寄贈された銀製のカップ「FAシルバーカップ」だった。
FAから日本にカップが寄贈される経緯については、『日本サッカー協会百年史』(2023年公益財団法人日本サッカー協会発行)で、後藤健生さんが詳しく書いている。当時、在日英国大使館の書記官補を務めていたウィリアム・ヘーグ氏の働きかけによって大使館から英国外務省に要請が伝えられ、FAが制作して1919年3月に日本に到着した。「大日本蹴球協会(現在の日本サッカー協会)」自体、カップが届いたことをきっかけに1921年9月に設立されたものなのである。
そして、その年の11月にはさっそく全日本選手権が開催された。正式には「ア式蹴球全国優勝競技会」という名称だったが、多くの人が「全日本選手権」と呼び、翌年の第2回目からは「全日本選手権」となった。東京蹴球団が優勝、山田午郎主将が駐日英国大使チャールズ・エリオット卿から「FA杯」を授与された。









