林幸多郎に求めたい「ロングスロー」以外のプレー、地上波で放送された「つまらない試合」で逃した絶好のチャンス【天皇杯準決勝で表面化「日本サッカー」今そこにある危機】(3)の画像
「相手に脅威を与える」ロングスローを得意とする林幸多郎(写真奥)。準決勝では足先で、見事なループシュートを決めた。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 勝てば官軍。この言葉を、サッカーの試合に当てはめてもよいものか。日本サッカーは現在、岐路に立たされている。サッカージャーナリスト後藤健生が延長戦を含めて120分の激戦となった今年の天皇杯準決勝と、その周辺から日本のサッカー界の「危機」に警鐘を鳴らす!

■高校サッカーと「プロの試合」の違い

「結果がすべて」の高校サッカーと違って(※文末注)、プロの試合はエンターテインメントでもあるはずだ。

 観客が満足するような試合をして、観客動員数を増やし、テレビ放映やネット配信の視聴者を増やし、広告収入を増やすことでクラブの経営は成り立つ。そして、選手たちはプロとして大好きなサッカーに集中できる環境でプレーして、サラリーを受け取るのだ。

 日本には歴史と伝統のあるプロ野球(NPB)や人気上昇中のバスケットボール(Bリーグ)やラグビーのリーグワン、さらに新興のバレーボール(SVリーグ)といったように、ボールゲームのプロリーグが複数存在する。Jリーグは、そうした他競技との競争もしているのだ。

 現在、JリーグはNPBに次ぐ観客動員を誇り、認知度も高い。だが、日本のトップクラスの選手100人以上がヨーロッパのクラブに移っていってしまう中で、下手をしたらJリーグは空洞化して人気が下がってしまう可能性もある。

 そんな危機感を共有するなら、「勝てばいい」といった試合をしていられるわけがない。

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