■進化し続ける「両チーム」のこれから

 スコアの上では広島の完勝だったが、さまざまな戦術的な仕掛けをした柏は素晴らしい試合をしたと言っていい。

 リカルド・ロドリゲス監督が就任した最初のシーズンで、従来とはまったくコンセプトの違うサッカーを完成させたことだけでも大したものだが、広島との試合ではその基本形からさらに攻撃のバリエーションを増やして見せた。あれだけポジションを変えているにも関わらず、選手と選手の距離感はしっかり保たれ、バランスを崩さないのだ。やはり、柏は今シーズン最も注目すべきということになるだろう。

 一方の広島は3バックを中心とした守備の堅さを見せつけた。そして、課題だった得点力についてはロングスローを含むセットプレーという形で結果を出した。

 ミヒャエル・スキッベ監督はパスをつなぐ攻撃的なサッカーを目指しているはず。そして、スキッベ監督はけっして勝負にこだわる指導者ではない(もし、彼に勝負にこだわる姿勢がもう少しあれば、リーグ戦のタイトルも手にしていたかもしれない)。従って、「セットプレーからの得点だけ」というのは、スキッベ監督にとってけっして本意ではないだろうが、一つの大きな武器を手にしたことは間違いない。

 リーグ戦の逆転優勝は難しいだろうが、広島にはまだもう一つのカップ戦、そしてACLエリートという大会も残っているので、今後はこの新しく手に入れた武器を使って戦うことになるのだろう。

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