
埼玉スタジアムで開催されるJリーグ最終節の「ホーム自由席」と「ビジター自由席」の料金差が話題となっている。だが、来年のワールドカップでは、そんな格差がかわいらしく思えるほどの「チケット価格」と「転売システム」になっているという。どういうことか? サッカーを牛耳る人々の、とどまることを知らない欲望が生んだ「大衆からフットボールを奪う」行為に、サッカージャーナリストの大住良之が警鐘を鳴らす!
■ホームもビジターも「同料金」に
Jリーグでも、ここ1、2年の間に「ダイナミックプライシング」を設定するクラブが出てきている。「試験運用」を含めれば、浦和レッズのほか、川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズなどが、このシステムを使っているという。
エンターテインメントやスポーツ興行でのダイナミックプライシングは、早い購入を促す(早い時期には低い価格で買うことができる)という意味もあるが、最も大きな理由は「収益を最大にする」ことにある。川崎のサポーターは非常に熱心で、しかも同じ首都圏にあり、川崎のホームスタジアム最寄りの武蔵小杉駅から埼玉スタジアムのある浦和美園駅まで、今では乗り換えなしで行くことができる。「ビジター自由席」2500席が売り切れるのは確実という判断で、ホーム自由席の約2.8倍という価格が設定されたのだろう。
私はこうしたことを好まない。Jリーグの興行はもちろん収益事業であり、収益を増やすことでチームを強化し、クラブの成績やステータスを上げていく努力をするものだが、「文化」という側面を考えれば、サポーターは不可欠な存在で、それはホームもビジターも変わらない。スタジアムの事情で入場料の価格は変わるだろうが、Jリーグという文化を守り、育てるには、全クラブがビジターのサポーター席もホーム側と同じ入場料に設定すべきだというのが、私の考えである。