Jリーグでも生まれた「靴なしゴール」

 渡辺の例に非常によく似たゴールが、2022年のJ2リーグでも生まれている。

 3月6日、第3節の大分トリニータ×横浜FC。横浜FCのFW山下諒也は左サイドを突破しようとして大分のDF小出悠太と競り合った際、右足のシューズが脱げてしまった。しかし、かまわずそのままドリブルで進み、中央にパスする。パスした後、山下は、はるか30メートルも後ろに残してきたままのシューズを一瞬振り返ったが、すぐにボールに目を戻しながら右足の足先のストッキングを少し直した。そこにボールが戻ってきた。

 ペナルティーエリアの左、山下はワンバウンドしたボールを胸でコントロールすると、ストッキングのままの右足でボールを小さく置き直し、右足でシュート。ボールは美しいカーブを描き、右ポストの内側に当たって決勝ゴールとなった。横浜FCは開幕から3連勝で首位を守った。

 1-1の状況から後半に生まれたビジターチームの決勝ゴール、チームを首位に導くゴールという面など、渡辺と山下のゴールは状況がよく似ていた。そして渡辺が着用していたのは、黒に白い3本線が入ったアディダスのシューズであり、山下のシューズは水色だったが、やはりアディダスのシューズだった。

 ただ、渡辺の場合にはシューズをしっかりと履いていなかったために脱げたのだが、山下の場合、ヒモはしっかり結んであったのだが、シューズのアッパー部分が破れたため、脱げたことが後にわかった。ベンチ前まで走って歓喜の輪に包まれた山下は、少し右足が痛そうな顔をしていたが、用具係が交換の白いシューズを持ってくると、すぐに履き替えてプレーに復帰した。

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