大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第174回「イアンおじさんの結び方」(1) 横浜FCに開幕3連勝をもたらした「右足ストッキング弾」、セルジオ越後と釜本邦茂の前で決まった「スパイクなし決勝弾」の画像
現在、ガンバ大阪でプレーする山下諒也(写真中央)は、横浜FC在籍時にスパイクなしゴールを決めた。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、ほどけちゃうとプレーに参加できなくなってしまう、アレのお話。

■ノースパイクなら「ノーゴール」?

 ときおり、プレー中にシューズが脱げてしまう選手を見ることがある。たいていは相手にシューズを踏まれるなどして脱げてしまうようだが、恥ずべきことだと私は思っている。

 現在のサッカールール(サッカー競技規則2025/26)では、第4条「競技者の用具」の第2項「基本的な用具」に、「袖のあるシャツ」「ショーツ」「ソックス」「すね当て」とともに、「靴」が挙げられている。シューズ着用は、試合に出場する選手の義務なのである。シューズが脱げてしまったら、原則としてプレーに加わることはできないということになる。

 私の大好きな本『YOU ARE THE REF』(ポール・トレビリオン/キース・ハチェット著、英国Observer Books刊、2010年)には、こんな設問がある。

「あるストライカーが、プレーの小休止に乗じて、緩んだシューズを直そうとした。しかし、シューズを外した瞬間、ボールが突然自分のほうへ飛んできた。ストライカーはシューズを投げ捨て、スピードを上げて相手を抜き、ストッキングだけの足でボールをネットに叩き込んだ。ストライカーは喜びを爆発させたが、ディフェンダーたちは怒号し、彼が正しく用具を着用していなかったため、ゴールは認められるべきではないと主張した。あなたの判定は?」

 元国際審判員であるハチェットの解説はこうだ。

「ノーゴール。ケガの危険性を考慮する必要がある。この選手は明らかに危険な状態だった。試合再開はドロップボールで行う。(中略)選手がスパイクを脱いでいるのを見たら、すぐに笛を吹いてプレーを止めるか、プレーを続行するため、すみやかにフィールドから退出するよう指示しなければならない」

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