■止めさせるべきだった「キック」

 ルール上は上記のような解釈ができる。だが、レフェリングの観点からはどうだろう。

「5分間」のアディショナルタイム表示だったが、その間に得点が生まれた。それを考慮に入れても、時計が96分を経過したところで終わっても不思議はなかった。FKが生まれなければ、瀬田主審は数秒のうちに終了の笛を吹いていたかもしれない。しかしFKになった。そのFKからの讃岐の攻撃の流れが切れれば、試合は終了となっていただろう。

 瀬田主審はFKの地点から、かなり離れた場所でキックを待ち構えるポジションをとった。GKも上がってきて、間違いなくゴール前にロングボールが送られる状況だったからだ。だから矢島がボールから少し離れる形になったとき、瀬田主審からは十分離れたように見え、「これでよし」と、江口にキックを促す笛を吹いたのかもしれない。

 しかし、このような意味を持ったFKであれば、讃岐陣にいたとはいえ、瀬田主審はまずFKのポイントをマークし、そこから10ヤードのラインを引いた後で、福島ゴール前のポジションに走れば良かったのではないだろうか。「バニシングスプレー」によるマークとラインがあれば、矢島に対するはっきりとした規制になったはずだ。

 矢島は明らかに「距離不足」だった。それはボールからほんの5メートルほどのところにいた井手本副審には明白だったはずだ。しかも矢島は、背を向けつつ数十センチながらボールに近づいた。江口がキックのモーションに入っていても、井手本副審はフラッグを上げてキックを止めさせるべきだった。

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