■ルール上の「問題」はあるのか

 このゴールに、ルール上の問題はあるだろうか。競技規則の第13条(フリーキック)の第3項に、以下のような記述がある。

「フリーキックが行われるとき、相手競技者が規定の距離よりボールの近くにいる場合、アドバンテージが適用できる場合を除いて、キックは、再び行われる。ただし、競技者がフリーキックを素早く行って、ボールから9.15m(10ヤード)以上離れていない相手競技者がボールをインターセプトした場合、主審は、プレーを続けさせる。しかしながら、フリーキックが素早く行われるのを意図的に妨害した相手競技者は、プレーの再開を遅らせたことで警告されなければならない。」(日本サッカー協会発行サッカー競技規則2025/26)

 これによれば、ボールから5メートル(この距離はあくまで私の目分量だが)の距離にいた福島の矢島にボールが当たり、それを矢島が拾ったことにより、讃岐の「アドバンテージ」にはなっておらず、FKはやり直しということになる。

 ただしファウルを取った後、主審は笛を吹いてFKを止めていたわけではなかったので、「FKを素早く行った」と解釈すれば、「プレー続行」は正しかったことになる。矢島は背中を向けており、ジャンプしたわけでもなかった。ボールは矢島が見ていないところから飛んできて背中にぶつかったのである。

 瀬田主審は2回笛を吹いている。一度は、矢島に“ボールから離れて、規定の距離をとるように”という注意だった。そして2度目は、「プレー再開の合図」というより、江口に“キックを促す”ものだったように、私には聞こえた。とすれば、2つ目の解釈も成り立つ。このときの瀬田主審と審判チームの判断は、そうしたものだったのだろう。だからゴールを認めたのだ。

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