大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第172回「サッカー界が発明した“2本足”の試合」(3)両監督が考え抜いた戦略と臨機応変の対応、死力を尽くした選手たち、リーグ戦では「拝めない」激戦の画像
96分、エリア内で伊藤達哉が倒され、川崎がPKを獲得。宮城天が冷静に決めた。第1レグ、第2レグ、2本の足(2試合)があるからこそ、ライバル心が燃え上がり、さらに盛り上がるのかもしれない。撮影/原悦生(Sony α1使用)

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、9月3日、7日に行われたルヴァンカップ準々決勝でも採用されている試合方式「2レグ制」について。

■第1戦「サブチーム」が奮闘も…

 この酷暑の中、浦和レッズ川崎フロンターレも8月31日の日曜日にホームゲームを戦い、浦和はアルビレックス新潟に1-0で、川崎はFC町田ゼルビアに5-3で勝った。互いに中2日で臨んだルヴァンカップ準々決勝の第1戦、浦和は大幅なターンオーバーを敢行し、DF石原広教、MF安居海渡、金子拓郎マテウス・サヴィオ松尾佑介、FW小森飛絢らを温存した。一方の川崎もMF山本悠樹とFW伊藤達哉を先発から外したが、攻撃の核になるMF脇坂泰斗やマルシーニョを送り出した。

 マチェイ・スコルジャ監督も長谷部茂利監督も「2戦制」を考えて、初戦ではダメージを少なく済ませ、第2戦が勝負と考えていたに違いない。浦和の「サブチーム」が奮闘し、MF中島翔哉が見事なシュートを決めて浦和が優位に立ったが、川崎は終盤押し込み、アディショナルタイムの5分に交代出場の伊藤が決めた同点ゴールが大きな意味を持つことになった。

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