■短期留学で「まったく違う」選手に
大住「杉山さんが活躍した1964年の東京オリンピック当時、釜本さんはまだ大学2年生だった。メキシコ・オリンピックが開催される1968年の初めに西ドイツに2、3か月留学しただけで、まったく違う選手になったよね。東京五輪の4年後には、隔絶したスターになっていた」
後藤「そうやって、さまざまな要素が絡んで釜本さんの成長につながっていくんだよね。そして、西ドイツに行ってスピードを身につけて、ものすごい選手になったよね。あの頃には本当にワールドクラスの選手になっていた」
大住「そのワールドクラスのすごさを現代のファンにうまく伝えられないのが、すごくもどかしい。川本さんが釜本さんのプレーでよく覚えていることはありますか」
川本「釜本さんのシュート力ですね。しかも、両足で同じように蹴れて、ヘディングも強い。僕は指導者もやっていたので、シュートを打っても全然ブレない体の強さに改めて驚きました。一番特徴的なのは、あまり体が前傾しないこと。常に上体が真っ直ぐに立っていて、シュートの際も足をそのまま振るだけだった。その印象がすごく強いですよね。胸でトラップしても全然バランスが崩れずに、落ちてきたボールをバンと打てるというイメージ。現役時代に同じことをやろうとかなり練習したけど、練習ではできても、試合では相手のプレッシャーがあるから、うまくできませんでしたね」