■数字以上に「大きくて強かった」

後藤「やっている選手たちもそうだし、見ているこちらも楽しかった」

大住「ブラジル人を中心に、外国から来たサッカー選手たちがとにかく、釜本さんだけは別格の存在として見ていたよね。話は戻るけど、後藤さんは初めて釜本さんのプレーを見て、どんな印象を持ちましたか」

後藤「身長は公称179cmで、本当は180ちょっとだったけど、数字以上にすごく大きくて強いなと感じたよね」

大住「大きいと感じたの?」

後藤「もちろん、うまさとかすべてを持っているんだけど、最初の印象はすごく大きいな、というものだったね」

大住「確かに釜本さんは大きかったけど、当初はそんなにプレーが速くはなかったんだよね。メキシコ・オリンピックの前の1967年あたりかな、同じ日本代表でも杉山隆一さんのほうがずっと速くて、僕の尊敬していた相川亮一さんという、のちの読売クラブの監督になった方が、釜本よりも杉山のほうがすごい、と言っていたのを覚えている」

後藤「昔の日本リーグは自由席だったから、左ウィングの杉山さんが走るタッチライン際からお客さんが入って、エンドが変わる後半になると観客も逆サイドに移動して見にいくくらいに、杉山さんは人気があった。当時は日本代表のコーチだった岡野俊一郎さんが、南米のクラブが移籍金を提示したとか話して、“20万ドルの足”なんてキャッチコピーがついたから、サッカーファン以外にも名前が広まっていたもんね」

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