VARの介入なし「後半アディショナルタイム10分40秒」が意味すること、古巣相手に「逆転勝利した」鬼木監督が証明したこと【5・11「国立決戦」で鹿島と川崎の明暗を分けたもの】(3)の画像
鈴木優磨のパスに抜け出したのは、田川亨介(写真)。この試合、国立デビューの26歳が国立初ゴール。「らしさ」を発揮した鹿島が勝利した。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズと川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後藤健生が検証する。

■疲労の影響を「否定」も…

 川崎フロンターレにとって、ACLE決勝大会の激闘から中5日での試合である。

 長谷部茂利監督は試合後の記者会見でACLEによる疲労の影響は否定し、むしろ気温に対する順応ができなかったと語った。公式記録によれば、気象条件は気温25.9度、湿度45%。真夏の暑さに比べれば低い数字だが、体が暑さに慣れていない時期でもあり、選手のコンディションに与える影響は大きい。

 だが、川崎は気温が30度をはるかに越えるジッダで戦った後だったのだ。ずっと国内で過ごしていたチームと比べれば、暑さ対策は進んでいたはずだ。やはり、ACLEでの疲労によって、暑さが選手たちに与える影響を拡大したと見るべきだろう。

 一方、鹿島アントラーズにとって、この日の川崎戦は4月25日の第12節、名古屋グランパス戦から週2試合のペースでの5連戦目だった(そして、この連戦を5連勝で終えた)。

 4月末から5月はじめにかけての大型連休は、スポーツクラブにとってはかき入れどきだ。冬の寒さから解放され、過ごしやすい気候の中で観客動員が見込まれる。そこで、休日を生かして連戦が行われるのだ。

 プロとして当然のことではある。

 だが、気温の変化も激しく、この時期の連戦は、選手にとっては厳しいものになる。

 相手にとっても同じような条件だから、どちらに有利、どちらに不利と言うことはできないが(運動量に依存したスタイルのチームには不利)、ただ疲労がたまった中での試合となれば、運動量は落ちるし、キックの精度も悪くなる。ちょっとしたミスも増える。

 そんなこんなで、連休明けのゲームは攻撃側の精度が落ちて決定機が作れなくなるし、逆に守備にミスが出て失点が増える場合もある。

 また、疲労した中で無理しながらプレーすることで、負傷のリスクも高くなる。鹿島対川崎の試合でも、レオ・セアラだけでなく、負傷したり、痙攣を起こす選手は多く、そのためVARの介入もなかったのに、後半のアディショナルタイムは10分40秒に及んだ。

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