■「五輪」と「W杯」の最長記録
私は、ペナルティーエリア内、ゴールエリアの幅(幅約20メートル、奥行き16.5メートル)からのシュートを「近距離からのシュート」とし、ゴールの中央を中心とし、その外、両方のペナルティーエリアとゴールラインの交点と、ペナルティーアークのトップを通る半径20メートルの半円の範囲を「ミドルシュート」、そして、その外からのものを「ロングシュート」とするべきではないかと考えている。異論のある人が多いかもしれないが、まあ、聞いてほしい。
時速30キロ、距離20メートルのシュートがゴールに到達するのにかかる時間は0.67秒。GKから見てワンステップ踏み、そこからジャンプすることができるギリギリの時間だ。ワンステップ入れることができれば、今日のプロのGKならゴールの大半をカバーできるから、20メートルを超した距離からゴールを決めるのは非常に難しいということになる。だから「ロングシュート」なのだ。
トム・キングの「ギネス記録」96.01メートルや村山智彦の93メートル、そしてルーク・コウルソン、さらには小笠原満男の自陣からのゴールなど、「超ロングシュート」は、相手GKがゴールを離れているという特殊な状況が生んだものである。GKがしっかりとポジションを取っていたら、20メートルを超す距離からシュートを決める確率はぐんと低くなる。だから釜本邦茂の「35メートル」が長く印象に残るのだ。
もちろん、1968年メキシコ・オリンピック当時の私はまだ高校生で、このシュートを現地で見たわけではない。生中継はなかった。あとからニュース映像で見ただけである。実際にスタジアムで見たなかで最も驚いたのは、2007年のJ1第1節、埼玉スタジアムでの浦和レッズ戦で横浜FCのFW久保竜彦が決めた35メートルのシュートと、2010年ワールドカップの準決勝でオランダの左サイドバック、ジョバンニ・ファンブロンクホルストが決めた37メートルのシュートだった。