
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、口をポカンと開けて見送るしかない、「特大の一撃」について。
■ミドルとロングの「境目」は?
シュートを距離別に見ると、「ミドルシュート」や「ロングシュート」がある。では、その境目はどこにあるのだろうか。
Jリーグは公式記録を出すに際してさまざまな基準をつくり、発表しているが、シュートの「距離」に関する記述はなく、したがってシュートの長さを記録していない。「ミドルシュート」や「ロングシュート」は、あくまでメディアが「主観」で表現しているにすぎない。
ほとんどのチームが試合前の「ウォーミングアップ」でシュートを採り入れているが、多くはペナルティーエリアの少し外からのシュートを繰り返している。しかし、これが決まる率はビックリするほど低い。ゴールの枠を外すか、枠内に蹴ってもGKにセーブされてしまうのだ。ところが、ペナルティーエリアに一歩持って入ってのシュートになると、不思議なことなのだが、6割から7割が決まる。GKのセーブ率はぐっと落ちるのである。
通常、人間が何かを見てから反応して体を動かすには、0.2秒から0.3秒かかると言われている。シュートのスピードは、プロでは時速100キロから120キロと言われている(2020年ワールドカップ、スペイン戦の堂安律のゴールが時速120キロだった)。秒速にすると、28メートルから33メートルとなる。
ゴールからペナルティーエリアのラインまでの距離は16.5メートル。秒速30メートルとすると、ペナルティーエリアのラインからのシュートがゴールに到達するには0.55秒。この時間が「GKがシュートを見て反応し、セーブできるかできないか」の境目になるということになる。