■結果を残すことで広げてきたチャンス

 田中が川崎フロンターレの下部組織からトップチームに昇格したのは2017年のこと。この年、シルバーコレクターと呼ばれてきた川崎フロンターレは初めて、リーグ優勝を果たす。ただし、田中のリーグ出場試合数はゼロ。勝利することの大きさと、それに関われなかったことの悔しさを体感しているはずだ。
 J1・4試合に出場した翌18年もチームはリーグ優勝、同24試合に出場した19年はリーグ優勝に手が届かなかったものの、31試合出場して主力に成長した20年はリーグ優勝をつかみ取っている。そして翌21年6月に海外に羽ばたいている。
 サッカー日本代表の活動においても、契機といえるのは21年10月のオーストラリア戦の活躍だ。崖っぷちに立たされた森保一監督が敢行したシステム変更とともに初先発として抜擢されると、自らゴールを決める活躍を見せるなどして勝利に貢献した。そうして掴んだカタールワールドカップという大舞台では、スペインを相手に逆転ゴールを決めていた。その反響の大きさは、説明の必要がない。
 結果を残すことでここまでチャンスを広げてきた田中碧は現在、イングランドで新たな結果を残そうとしている。次なる“勝利”で掴むものはどれほど大きいものなのか、本人だけでなく、多くの人が楽しみにしている。
(取材・文/中地拓也)
(その3へ続く)

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