■樋口は主軸ボランチに
一方の樋口もポポヴィッチ体制では2列目かボランチのサブという位置づけで、昨季の試合数自体は36試合に出ているが、大半が途中からという形だった。しかし今季はボールを止める蹴るの技術やリスタートの精度、守備のハードワークを買われ、主軸ボランチに定着しつつある。
「オニさんはボランチがチーム中心として周りを動かしていくところを求めている。声の要求のところもそうですし、それが体現出来たらもっと選手として成長できるんじゃないかと思います」と樋口も自身に託されている役割の重要性を認識し、取り組んでいる。
柏戦で目を引いたのは、相手の小泉佳穂と原川力の両MFへの対応だ。前節の浦和レッズは鹿島と同じ4枚で、3バックの柏に苦戦。小泉と原川の動きをボランチが止められずにガス欠になり、穴を作ってしまっていた。鹿島はその試合をフィードバックし、樋口らボランチが2人を消すタスクを遂行したのだ。
「小泉選手と原川選手のところがキーになってくるのは分かっていたし、ボランチを経由させないように意識しました。何回か入れられたシーンはありましたけど、チームとしてそんなに歪みはなかったと思う。それが相手に流れを渡さなかった要因かなと思います」と本人も手ごたえをつかんだ様子だ。
実際、樋口がスタメン出場した直近4試合は中盤の安定感が格段に増している。
「守備で穴を開けない、攻撃ではテンポを作りながら安定したビルドアップをしたいと考えていますけど、まだまだ理想には程遠いところがあります。でも勝ちながら修正していければ一番。今日はそういう意味でいいゲームだったと思います」と充実感をにじませた樋口。彼が鬼木監督体制で輝いた中村憲剛(川崎FRO)、大島僚太(川崎)のような存在になってくれれば、鹿島もやりたいサッカーに近づく。ここからのさらなる成長に期待したいところだ。
(取材・文/元川悦子)