■欧州王者を指揮する「キッカケ」は…
それでもイビッチは丁寧に彼の足跡を語ってくれた。
そして「ここで優勝できれば、5か国のリーグで優勝という世界で初めての監督になる」と誇らしげに教えてくれたのである。それほどまでの名監督に自身のプロフィールを語らせてしまった不明を、私は大いに恥じた。
「ここへ来たのは、たまたまということかな」と、彼はFCポルトの指揮を執るようになったいきさつを話してくれた。
「たまたま、私はFCポルトの『インターナショナルマネジャー』のルチアーノを以前から知っていた。6月のある日、私がスプリトの自宅にいるとき、彼から電話がかかってきたんだよ。『ミスター、あなたは今フリーですか』」
「前シーズン、私はハイドゥク・スプリトの監督をしていて、カップ戦では優勝したけれど、リーグでは8位に終わり、新シーズンは理事としてチームの統括をする契約を結んでいたんだ。それを話すと、ルチアーノはすごくがっかりした様子だった。だがFCポルトの監督オファーの話だ。『ちょっと待ってくれ、クラブの役員と話すから』と言って電話を切り、会長や役員と話してポルトに行くことを決めたんだ」
「世界中のどんなコーチが、欧州チャンピオンをコーチできるチャンスを逃すことができるだろうか!」と、イビッチは楽しそうな笑顔をして話してくれた。