■監督は「パスポートを見ない」こと

 このシーズン、FCポルトは26人のプロ選手を登録していた。西ヨーロッパ諸国では20人前後というチームが大半で、足りなくなったらユース選手を出場させるという形だったから、少し多すぎるのではないかと思った。

「たしかに多いね。しかし、私が来たときには32人もいたんだ。これでもずいぶん整理したんだよ。でもなぜかはわからないけど、この国では、少しケガをすると治り方が遅いという印象がある。だから選手が多いのかもしれない」

「たくさん選手がいても、必ず『ベストの11人』は存在する。監督に必要なのは、誰に対しても正直なこと、そして、ベストの11人を見抜く力だね。ただ、ひとりの人間としては、全部の選手が満足できるようにはプレーさせることはできないことに心の痛みがある。選ぶこと自体は難しいことではないけど、プレーできない選手が多すぎるというのは、本当に難しい状況なんだよ」

「このようなクラブでは、『監督はパスポートを見ない』ことがとても重要だ。つまり、国籍とか年齢に関係なく、そのときのベストの11人がプレーしなければならないというのが、大原則なんだ。もちろん、実績のある選手を尊重することは非常に大事だ。彼らは過去に素晴らしいプレーをしてきただけでなく、現在も同じレベルのプレーが期待できる。しかし、時には無差別に見ることが、監督の仕事なんだよ」

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