■ルール改正で「ハンド完全禁止」に!

 ただ、残念ながら主導的役割を果たしたのは「ウェンズデイ」ではなかった。「ウェンズデイ」のサッカークラブが誕生する10年も前、1857年に創立された「シェフィールド・フットボール・クラブ」が1858年に制定したのが、最初の「シェフィールド・ルール」だった。このフットボールクラブも、クリケット・クラブ(1751年創立と推定されている)の冬のトレーニングのためにつくられたものだった。

 ちなみに、シェフィールドFCは現在も活動しており、アマチュアリーグでプレーしているが、国際サッカー連盟(FIFA)によって「世界最古のサッカークラブ」として認定されている。

 1858年につくられた最初の「シェフィールド・ルール」は、1863年の「FAルール」と大きな違いは見られない。シェフィールドFCのメンバーの多くは「シェフィールド・カレジエイトスクール」というハイスクールの出身者で、ボールを足で蹴って進める「キッキングスタイル」のフットボールを好んでいた。

 しかし、その後の数年間の改正のなかで、より魅力的な競技にするために大胆なルール改正が行われた。「ハンドの完全禁止(FAルールでは『フェアキャッチ』が認められていた)」、「1人制オフサイド(FAルールではボールより前にいる選手が全員オフサイドだった)」、「ルージュ(現在のラグビーの『トライ』に近い得点方法)」など、FAルールとは大きく違う方向性となっていたのだ。

 ロンドンのFA誕生の4年後、1867年には「シェフィールド・フットボール・アソシエーション(SFA)」が設立され、シェフィールドFCに代わってルール改正を担うようになる。この頃にはロンドンのFAは加盟クラブ数が10まで減少し、「休眠状態」に近くなっていた。イングランド全体を見ると「シェフィールド・ルール」でプレーするクラブが支配的になっていたのである。

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