大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第157回【神戸の左SB初瀬亮が選んだ「ビッグ・ウェンズデイ」】(2)ハンド、ヘディング、ゴールキーパーは「サッカーの父母」シェフィールドで誕生した!の画像
ヴィッセル神戸の不動の左サイドバック、初瀬亮が選んだ新天地は…。撮影/原壮史(Sony α‐1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、ヴィッセル神戸の「不動の左サイドバック」が新天地に選んだイングランド名門の「知られざる一面」——。

■FAとシェフィールドは「サッカーの父母」

 良質の石炭と鉄鉱石が近場で採掘されたことから、シェフィールドは産業革命、なかでも鉄鋼業の中心地となり、大きな人口を抱えるようになる。20世紀のはじめには、現在に近い45万人もの大都市になっていたという。

 その「都市の勢い」が、そのまま「サッカー」の勢いとなる。ロンドンにいくつかのクラブが集まって1863年に「The Football Association(FA)」を結成、ルールを統一して「サッカー」が誕生するのだが、シェフィールドを中心とした「北部」のクラブはこれに参加せず、独自のルールでプレーしていたのである。

「サッカー」という言葉は「FA」の「association」という言葉から派生したスラングなので、この当時のシェフィールドで行われていた競技を「サッカー」と呼ぶのはふさわしくなく、あくまで「football」なのだが、後に両者は統一されることになるので、「統一前」にシェフィールドで行われていた競技も「サッカー」と呼ばせてもらう。

「シェフィールド・ルール」は単なる「ローカルルール」ではなかった。その後のサッカーの発展に大きな影響を与える要素がたくさん入っていた。今日のサッカーは、実質的に「FAルール」と「シェフィールド・ルール」の2つが融合して誕生したものである。両者はいわば「サッカーの父母」と言うべきものなのだ。

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