かつては日本で、最近はUAEやモロッコなどで開催されたクラブ・ワールドカップ。各大陸の王者など7チームが参加していたが、今年は世界の強豪32チームが参加する大会へと、大きく変貌を遂げた。レアル・マドリードやマンチェスター・シティ、日本からは浦和レッズなど、世界中からビッグクラブが集まる楽しみな大会であるが、「かなりの無理や矛盾を感じる」と、警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト後藤健生。どういうことなのか?
■準優勝イタリア代表の「中核」
こんな例を思い出す。
1994年のアメリカ・ワールドカップのことだ。決勝に残ったのはブラジルとイタリア。決勝戦は双方の守備の意識が高く、結局120分を戦って0対0で終了。PK戦ではイタリアの守備の要フランコ・バレージと攻撃の中心ロベルト・バッジョがキックに失敗して、ブラジルが1970年大会以来24年ぶりの優勝を飾った。
このとき、イタリア代表の中核をなしていたのはACミランのセットだった。
ミランはワールドカップ直前に行われたチャンピオンズリーグで優勝していた。1988ー89シーズンに優勝して以来、6シーズンで3度チャンピオンズリーグ(カップ)で優勝し、当時、日本で開かれていたトヨタカップのために何度も来日していた。当時のヨーロッパ最強クラブだったと言って過言でない。
この最強のミランを築き上げたのがアリゴ・サッキ監督で、ミラン監督を退任していたサッキは、1994年のワールドカップではイタリア代表を率いていた。サッキ監督がミランの選手を多数招集したのは当然のことだ。ことにバレージやパオロ・マルディーニなどの守備ラインはミラン勢で固められていた。
CL決勝を戦った後、ワールドカップを最後まで戦い抜いたミラン勢には疲労が蓄積。4連覇を狙った翌シーズンのセリエAは4位に終わり、CLではなんとか再び決勝までたどり着いたものの、準優勝に終わった。
ワールドカップの影響は大きかったのだ。